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No.097 『 インキのセット性、乾燥性の向上に着目した湿し水の処方 』
2014/07

インキのセット性、乾燥性の向上に関するテーマは版材メーカー各社から砂目構造・技術の違いによるアプローチがなされていますが、 今回は湿し水の処方によるアプローチについて書いてみたいと思います。

オフセット印刷の機構上、セット性、乾燥性を向上させる為の最重要な課題は「いかに水が絞れるか=水量・インキ量いかに少なく出来るか」 という事に尽きると思います。もちろん湿し水単独で発揮される性能ではありません。性能発揮には湿し水の他、インキ、版材、印刷機、 紙などの要素が複雑に関わり合っていますので、それぞれの要素の最良の組み合わせが必要です。それでは各要素に対する湿し水の理想的な処方とはどのようなものでしょうか?

@インキの紙への付着・濡れ → Aインキの広がり・レベリング → Bインキのセット→ Cインキの乾燥

上記が、絵柄が形成され、乾燥するまでの過程ですが、Bのインキのセットとは「付着したインキの皮膜内部はまだ濡れているが、印刷シートの積み重ねで 裏移りが起こらない状態」をさします。Cの完全乾燥まで、インキ成分の乾性油(アマニ油など)が空気中の酸素を取り込み活性化し、隣接する乾性油分子同士が時間をかけて結合して硬化が進みます。一般的には、乾燥促進の為に、コバルト・マンガン・亜鉛などの金属石鹸がインキに添加されていますので、 これらの化学物質は、水に接触する事で乾性油分子同士の結合を早める助剤(触媒)として働きます。

@〜Cに至る過程で、インキ中の水分はAのインキの広がり・レベリングと、B、Cの助剤による乾燥促進に必要ですが、乾燥性の向上という観点からインキ中の水分、 つまり湿し水の残留は必要最小量にする事が望ましいと思います。インキ中に残留する湿し水は、前段階の湿し水とインキが接触、混練される過程でインキ中に分散し、 版面上でインキから吐き出されずに残ったものです。

この「インキに残留する湿し水の量」を減らすには、以下の3点に留意した湿し水の処方設計が必要になります。

  1. 湿し水に要求される特性を必要最小量で実現する事、つまり水が絞れる状況にする為に湿し水として最大限のポテンシャルを発揮させる事。 特性には湿し水を給水ローラーで揚げていく過程での「水膜を薄く、ローラ全面で均質に保つ特性」、混練される過程での「インキタックを適正値まで下げ、 必要な含水率にする為、インキに水を取り込ませる特性」、版面での「インキから、水を吐き出させ、十分な非画線部の不感脂化性・整面性を発揮させる特性」があります。

  2. 湿し水はインキと水の界面(接触面)に結合して働くので、面で水分が残留する事を避けられません。よって、面が大きくなるほど=インキ中の水分が細かく分散されている程、 水分が多くなり、最終過程に乾燥が遅くなるという事になると思います。版面でのインキからの水の吐き出しにも大きく影響しますが、 混練中、インキ中に分散させる水滴の大きさを、前述した湿し水に要求される特性を維持し、且つ可能な限り大きくさせる事。一般には適正乳化という言葉が使われます。

  3. 水以外の原材料(溶剤・不感脂化剤、乳化剤、緩衝剤、殺菌剤)で乾燥の遅い材料はなるべく選択しない。選択しても最小量に止める事。


今月より速乾型の枚葉用湿し水「ロハス1QD」を上市していますが、1〜3のコンセプト(+αでインキドライヤーも配合している)で設計した商品です。 ぜひ一度、テストの機会を頂けたら幸いです。また、今後も湿し水の開発でも基本性能として1〜3のコンセプトは取り入れていく予定です。

 
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